中国四千枚の歴史
えー……
最近、目を覚ますときは、必ずサラがギャン泣きしたときの雨宮です、どうもこんばんは。
「なるほど、可愛さ余って憎さ百倍ってこういうことか……
人生は何事も勉強なのだな……」と、眠い頭で最近よく考えます。
いや、可愛いからこういう軽口も叩けるんですけど。
さて、ここのところ、
昼夜逆転で学校にもろくすっぽ出られていない私でしたが、
これからパキスタン行き、そして入院が待っているのだから、
欠席欠課は少しでも減らさねば! と思っていたところに、
またとないチャンスが転がり込んできてくれました。
どうやら今週は、2年生の修学旅行のおかげで、
いつもは7限+αまで授業しているところを、
(教師がいないため)5限までで切り上げてくれるそうで。
朝から最後まできっちり教室にいられるチャンス!
これをのがしてはなるまい!
今日こそはと、前日の20時に起き(もちろんサラの泣き声でorz)、
朝は母にローソンでエスカップをねだり、
なんとか5限目の現代社会を居眠りするだけ(?)で乗り切りました。
一応思春期とか、年頃とか冷やかされる年齢にも関わらず、
朝っぱらから「踊る赤ちゃん人間」の流れる車中でエスカップを一気飲みし、
眠気をすっ飛ばせるようにと、人差し指で一生懸命まぶたを吊り上げながら、
「目覚めよ! 我が体内に取り込まれた無水カフェインたち!!」
とか言ってると、だんだん自分で自分をぶっ壊してるような、
いたたまれない気持ちに襲われます。
さて、なかなか無い5限授業に小躍りして喜んでいた私ですが……。
「あ、雨宮さん、今日の放課後、
1年生で募金活動のプリント刷りやるからヨロシク」
ちょっとだけ出てきては、「チャラ」と呼ばれていた
同い年の生徒会長・キーくん(あだ名がいつの間にかついた)が、
昼休みにさらりと言いました。
「いつも学校来てなくて、ロクに働けてないからな!
よし、まかしとけ!!」
今思えば、これが全ての始まりでした。
放課後、掃除もそこそこに切り上げ、鞄を持って相談室(兼用生徒会室)へ。
ところが、そこにいたのは生徒会長・キーくんただひとりだったのです。
いや、確かに生徒会の1年生は限りなく少ないぜ?
でもほら、文殊の知恵じゃないけど、
影の薄いニシダって書記は確か1年生だったような……。
「……なあ、ニシダは?(;´Д`)」
「ん? ああ……来ない。(´ー`)」
「来ないってなんだよ!(;´Д`)」
「死んだ」
「死んだってなんだ!? 聞いてねえぞゴルァ!!」
「うん、ふたりやね。人手、足らんね」
「圧倒的に足りねえよ!(;´Д`)
で、今日のプリントとやら、何枚プリントするんだ?」
「んー……先生と話しあったんだけど、
1000枚くらい要るらしい」
この言葉に、私は卒倒しかかりました。
1000枚? この学校まるっと全校合わせても1200人なのに? なんで1000枚?
ボンボン学校ならいざ知らず、近所でも柄が悪いと評判のうちの学校で、
募金活動に参加する奴なんて、キチ○イか、
推薦狙いか、運動部の強制参加しかいないのに、なんで1000枚!!(;´Д`)
「で、お知らせを4つつなげたものをプリントするから、
それを一枚4つに裁断して……」
「お前、それ4000枚じゃねえか!
お前、ふたりだぞふたり! なんかの間違いだろ!!(;´Д`)」
「俺も間違いだと信じたい。
というか、早く帰りたい……」
3年生は引退……。
2年生は根こそぎ修学旅行で、今頃ハウステンボス……。
1年生はチャラチャラっぽいキーくんと、半ばヒッキーな私だけで、
ニシダはなんだか知らないが、とにかくサボり……。
「……_| ̄|○」
「早く帰りてえ……」
どうやらキーくんが落ち着いて見えたのは、のんびりマイペースなのではなく、
ただ単に、生徒会長という立場から悟らずにはいられなかっただけのようでした。
「なあ、雨宮さん……あれ、E先輩(前会長)じゃね?」
「なに!?」
相談室前の窓から校庭をのぞくと、そこには確かに
最上級生のネクタイをつけた、前会長の姿が見えました。
あろうことか、友人と集まって、バレーボールでトスなんかしちゃってます。
藁にもすがりたい羊の1年生ズ(私とキーくん)。
しかし……めちゃめちゃ遊んでる……遊んでるよ……
「おい、キー、おまえ行けよ」
「おいおい、前期から一緒だったんやろ?
雨宮さんが行くべきやろ、ここは」
「いやいや、めちゃめちゃ楽しそうに遊んではるやん……無理やろコレ」
「じゃあ俺にだって無理だろw上級生だぞ上級生」
互いに汚れ役を押し付けあっている間にも、無情に時は過ぎていきます。
そしてどちらがそれになる前に、目ざとい前会長が私達の熱い視線に気づいたのでした。
「あ、雨宮さんじゃん」
「せ、せせせせ先輩(;´Д`)
ど、どーもっ」
「どうしたの、そんなところで、
キーとふたりで?(´ー`)」
お? 向こうから聞いてくれた?
もしかしてもしかしなくても、これはラッキーチャンス?
4本の腕が6本に増えるかも?
「いや、実はっすね、
かくかくじかじかで、プリントめちゃめちゃ刷らないといけないのに、
2人しかいないんっすよー。会長、助けてくださいよー」
「あ、俺、もう少したらバイトだから今日は無理w」
玉 砕 。
嘘つき! こんなに楽しそうに遊んでるくせに!!
ちくしょう、前会長め、事もあろうに逃げやがったな!!
「んー……やっぱり、カコ先輩の色仕掛けがないと無理のようだな」
「そうっぽいなorz」
そして他に誘えそうな腕もないまま、
そうこうしているうちに付く先生の準備が整っただとかで、
4本の腕のまま、恐怖の戦場へと赴くことになりました。
印刷室で一通り説明を受け、ひたすらコピー機で刷るキーくん。
ボタンひとつの裁断機でひたすら切る私。
刷り終わり、暇を持て余すキーくん。
そのうち、10枚までしか切ることの出来ない、
アナログな裁断機まで動員させるキーくん。
「……切っても切っても減らないんだが……」
「同感……早く帰りたい……」
なにしろ1000枚を4000枚に増やす作業。
一回に裁断できる数はよくて40枚。
おまけに、紙の束が静電気でくっついて、
なかなか端が整わず、裁断機に一回入れるのにも一苦労。
「これって……
これこそまさに庶務(一回も来たことがない)の仕事じゃね?」
「ばかやろう、キー……
どっちみち庶務も2年生だから留守なんだよ……」
くたびれた目をして紙を切り続ける生徒会会長と副会長。
制服はほこりまみれ紙まみれ。たまに口をついて出るニシダへの恨み節。
いつか先輩がたから聞いたあの言葉……。
「生徒会は学校の雑用係」。
本当だ……先輩……本当でした……。
切っても切っても減った気がしない。
むしろ増えていくような気がする。
いつ終わるのか分からない。
そんな裁断物語にも、終わりはやってきてくれました。
「これで……最後だ!」
「やっと家に帰れる……!(ノー`)」
ガチョン。
最後の裁断の音に拍手を送り、ふと時計を見れば、
終業したときには15時だったのにも関わらず、2時間も経過していました。
これじゃ通常日課の時と大して変わらないじゃないか(;´Д`)
「よし、このプリントは俺が相談室に持って行こう」
「それなら自分は他の荷物とお前の靴を持って行こう」
相談室と印刷室は別の校舎にあるため、一旦外に出ます。
陽が短くなったおかげで、17時とはいえ、すでに暗くなりかけ。
私達が印刷室にこもっている間に、ぐずつき模様だった空も、
雨が降り、いつの間にか止み、うっすらと晴れてました。
「このプリントたちこそ、まさに!
『中国四千枚の歴史』! なーんちゃって」
「……(;゚Д゚)
キー、ベタすぎるぞ、おい」
適当に相談室に4000枚その他を運び込んで、
こんなに刷って……本当に使うのかなあ……orz
あいにく、涙が出るくらいいいタイミングで足りない電車のおかげで、
さらに一時間半もの時間をかけて(普段は一時間弱)家に帰り着きました。
ああ……生徒会とはなんという雑用係であることか……。
今度ニシダを見つけたら、
小一時間ほど取調べしてやろうと決め込む、疲れきった一日でした。
by esther21 | 2007-12-04 19:54 | 学校